◆◆◆ 若山隆行 エッセイ back number 2010 ◆◆◆
 今年も残すところわずか。特別忙しくもないですが、なんとなくサーッと過ぎ去っていってしまいそうな予感。
 今回はすっかり順番を忘れてしまっていて、何もネタを用意していません。着手するのも遅くなっているのでどうなることやら。
 だいたい僕の書き物はそうなんですが、構想や下書きなしに書き始めて行って、誤字など以外は後から見ても修正しません。なのでオチもへったくれも無いです。このエッセイも何気に7年目ということでして、当然少しは文章力も付いたかと見返してみましたが、さほど変わっておりませんでした。そのまんま来てんスね。

 ちなみに、どういったものを書いていたかというと、、、「Medeski,Martin&Wood/It's A Jungle In Here」「Fairground Attraction/The First Of Million Kisses」「Van Morrison/Astral Weeks」「Jonathan Richman/Modern Lovers」「ふちがみとふなと/Hppay Set」「Wasabi/Morest Romanesque」「Ellie/Bithes In Babylon」「RCサクセション/初期のRCサクセション」「西里マキコ/夜が明ける前に秘密を打ち明けよう」「Arthur H/En Chair Et Enos」「Charles Mingus/Blues & Roots」「Norah Jones/Come Away With Me」「Ajico/Show」「Madeline Peyroux/Careless Love」「Sauter Finegan Orchestra/Inside」「Carmen McRae/The Great American Songbook」「若山隆行について」「立川亮とタンゴアカシアーノ/クロダサトルの優雅な生活」「アップライト・ベースについての話」「jazz名盤」「夏木マリ/パロール」「浅川マキ/浅川マキの世界」「Bill Evans/Intuition」「Brian Bronberg/Wood」「Cannonball Adderley/Live」「Sarah Harmer/4枚のアルバム」「Duke Jordan/Flight To Jordan」「Pointer Sisters/That's A Plenty」「Lena Horn & Michel Legrand/Lena & Michel」「Laura Nyro/Season Of Lights」「Shirley Horn/I Thought About You」「Sarah Harmer/Escarpment Blues」「Stevie Wonder/For Once In My Life」「Janis Joplin/In Concert」「Metallica/Ride The Lightning」「秋庭豊とアローナイツ」「Marvin Gaye & Tammi Terrell / Greatest Hits」といったところ。こうして眺めてみると、最近まで「ウッドベース縛り」があった為、まだまだ書いていないアルバムがあるじゃないの。それじゃどれにしようかな?とレコードとCDの棚を眺めていたら、このアルバムが目に入る。

 吉田美和 / beauty and harmony

 ナニナニ?発売日は1995年?今が2010年だからエート、、、既に15年経っているんだねえ。ゲー!15年!?マジですか、、、?いやあ時の経つのは早いもんですな〜。37−15=22。僕その頃22歳です。音楽を毎日探し歩いて、むさぼる様に聴いていた頃ですね。うーん、じゃあ今回はこれにしよう。

第三十八回

 吉田美和 / beauty and harmony

 ご存知「ドリカム」のシンガー、吉田美和のソロ作である。
 僕はドリカム自体をほとんど知らない人間なので、それとの比較は出来ないのだが、ソウル界の伝説的なセッションミュージシャンがバックを務める、という理由で購入した。ギターにデヴィッド・T・ウォーカー、ドラムはハーヴィー・メイスン、ベースにチャック・レイニー、、、、、そう、ミュージシャンの間では教科書的なアルバムである「Marlena Shaw / Who Is This Bitch Anyway?」という大傑作アルバムと同じ組み合わせのリズム・セクション!!ここに反応して購入してしまった人も多いはず。おそらくは吉田美和本人が、ソロだっつうんで、どうせなら自分の好きなミュージシャンを呼んで作ってしまえ!という事なんだとは思うが、これにプラス、グレッグ・アダムス、マイケル・ブレッカー、ラルフ・マクドナルド、弦アレンジにジーン・ペイジ(!)と来たらもうひれ伏すしかありません。こういう大胆な事をしても誰も文句の言いようがないくらい既にドリカムはビッグネームでしたしね。ええ、感心&嫉妬したものです。



 ベースのチャック・レイニーはモータウンのジェームス・ジェマーソンと並び、僕のアイドルの一人でもあります。「驚異の一本指奏法」でヒジョーに独特なグルーブを捻り出すワン&オンリーな方。僕も例によってマネはしてみましたがこういう風にはなりませんでした。出来ません。諦めました。他のセッションで来日時にサインをくれるっつうんで彼に、「バック、ビッグ、プリ〜ズ」と言った記憶があります。なんとか通じたようで背中に大きくサインをしてくれました(笑)「やさしい人だぁ!」と思いました(笑)
 彼と、ギターのデヴィッド・Tはもう何十年来の付き合いで、70年代以降のソウルのリズムセクションと言えばこの二人に、ドラムのバーナード・パーディを加えて、というのが基本形というくらいの相性。今回はドラムはハーヴィー・メイスンですが、これは上に書いたMarlena Shawを意識したものでしょう。

 さてこのアルバム、基本的には少し大人の失恋歌集といった趣で、おそらく一般的なドリカムのイメージよりもちょっと大人向け、かつパーソナルな内容で占められているのではないかと。(上に書いたように、ほとんど元を知らないので街やテレビで聴いたシングルの記憶を頼りに比較ね。)僕なんかは、このころ立派に成人しておりまして、自分で音楽をやっているということもあってか、そこらへんのJ-POPのラブソングなんかは歌詞と相まってもう気恥ずかしくて感情移入できないところもあり、かつドリカムでの吉田美和さんに対する勝手なイメージも手伝って正直あまり歌そのものに期待していなかったのですが、いやもうこれ号泣です。女性目線で描かれた物語ばかりですが、感情移入しまくりです。僕は特に2曲目からの「つめたくしないで」「泣きたい」「バイバイ」までの流れが最高!と思います。記事を書くために車で聴き直していたのですが、僕は多分カーステを相当大きい音で聴くほうで、普段の感じで聴いていましたらこれまたどっぷりハマりまして。音に染み付いた当時の思い出なんかも一緒によみがえるのでしょうか?あやうく走行不能に陥るところでした。
 当時はドリカムのアルバムよりは売れなかったらしく、知らないとか聴いたことが無いという人もいると思いますが是非聴いていただきたい。「歌」をサポートするというのはこういう事です。歌と楽器が一緒にぐるぐると昇っていく感じ!これをさらに日本語の歌で聴けるというのがうれしい。発売から15年、今日も全く色褪せること無く聴けることがわかりました。これから15年後はどんな風に響くのでしょうか?

※ちなみに、この吉田美和のソロ2作目「beauty and harmony 2」が2003年にインディ扱いで出ていました。これ僕知りませんでした。そして2009年にメジャー再発(しかもDVD付き!)されているのも全く知りませんでした。買わねば。発売サイトを見ると、本人に「なぜタイトルをbeauty and harmony 2に?」の問いに「1があるのを知って欲しかったから」とのお答え。素晴らしい。

-2010.12月


 突然ですが、2005年の第十二回で取り上げたsauter finegan orchestra/insideの記述の中で間違いがありました。一度手放していたこのレコードを最近最購入したことで発覚!
 えーと、『1曲目「four horsemen」というホーンセクションをフィーチュアーしたサウンドで「ああこんな感じ」と思うのですが2曲目「10,000 BC」でいきなりバラード。しかも男性ボーカル入り〜』とありますが、
正しくは『2曲目「Old Folks」でいきなりバラード〜』が正しいです。
 えーなぜこんな間違いをしていたかと申しますと、昔の盤ではよくあるのですが、ジャケットに記載されている曲順とレーベルに記載されている曲順が違っていて、僕はジャケットの方の曲順をそのまま書いてしまって、それを前提に話をしてしまったこと。
 だが、それもこの曲が「Old Folks」という曲だと知っていれば起こらなかったこと。
 そもそもこの「Old Folks」という曲をマイルス・デイビスのアルバム「Someday Prince Will Come / いつか王子様が」に収録されていることを知らなかったということであります。
 基本ジャズマンでない私はマイルスの超有名版を聴いていなかったのです。
 ということは、この曲はバージョンさえ違えどマイルスが演ってるってことはぁ!超有名曲ってことじゃあないですか!!
 そうなんです、要は僕がこちらの方面について無知だったから起こったことです。皆さんすみません。まさかまさか、アナログ盤でこれを購入した人がいるとは思いませんが、タンゴのビデオの挿入曲はなんだろう?と思っていた方すみません。
 ちなみにこの曲の歌詞についての記述が http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20060809 にあるのですが、そのまま転載するのは気が引けるので、よかったら見に行って見てください。
 いやあ、いい曲じゃん!意味も知らずにエンドロールに挿入したけど、あれって正解だったんだなあ!俺ってセンスいい!
 以上謹んで訂正させていただきます。
 
 いやあ、よかった。あらためて買いなおしていなければ気がつかなかった!しかしそれにしても先月、今月とレコードをたくさん買った月でした。
 基本、結構買っちゃうんですけど、この2ヶ月は多かった!50〜60枚になるかなあ。とは言っても値段にしたら大したことないのです。
 だいたい月に一度国立にあるディスクユニオンに行って、100円コーナーにある「定番もの」を10枚ずつくらい買っておいて、それを一月の間楽しむ、というサイクルが最近のパターンなんですが、それ+ネット購入+渋谷などへ出向いて購入といろいろ重なってババン!と増えました。
 「そんなに聴くヒマあるのかよ?」いえ、無いです。無い上に前から溜まっているレコードもあるので、運が悪いと初視聴が3年後だった、ということもあります。
 しかも最近レコード棚の下のフローリングが若干沈み気味に見えるのが恐怖の種でもあります。

 さあ、なんだかんだ言ってスペースを埋めているように見えますが、この間に何にしようか考えている訳です。
 流れ的に当然のことながら、ここ最近買った多量のレコードからのチョイスになると皆様お考えでしょう?いやあ残念でした。
 今回はこれにします。

第三十七回

  
 Marvin Gaye & Tammi Terrell / Greatest Hits

 Tammi Terrell タミー・テレル.「最高の女性シンガーって誰?」という質問をされたら真っ先に思い浮かぶ人。
 すごいなあって思う人はたくさんいますけど、歌の上手さとブルージーさとキュートさをバランスよく兼ね備えたシンガーってあまり古今東西いないんですねえ。
 ま、でもバランス型ってことは突出したところがないってことだよね?と思うかもしれませんが、いやいやいや突出しまくりです!今回紹介のマーヴィン・ゲイとのデュエット集での突出しまくりはすごいです。

 最近、トータス松本さんがCMでカヴァーしていたのでご存知かもしれませんが、(セイ・イエーイエーイエー イエーイエーイエーの歌!)の「Stubbron Kind Of Fellow」や、ベトナム戦争のことを歌って 70年代の新時代を切り開いた「What's Goin On」などでも知られるマーヴィン・ゲイ。
 これ前後にも同社の女性シンガーとはデュエット盤を発表しているのだが、あとにも先にもこのタミー・テレルとのものには敵わない。
 13歳で歌手でデビューし、24歳の時に脳腫瘍で亡くなったタミー・テレル。彼とのデュエットはこの死の2,3年前から直前までのもの。
 モータウン入社以前はジェームズ・ブラウンのバンドにも在籍していたらしく、ただかわいらしいだけでない独特なノリや声の伸びはここらへんで鍛えられたのであろうか?
 ま、そんなことはどうでもよくて、どうすれば多くの人に「これは良いよ」と伝えられるかということなんけども、難しいよなあ、音も載せられるわけでないしなあ。
 でもおそらくどこかで聴いたことある曲ばかりだと思うんですねえ。 

 一番有名なのは多分「Ain't No Mountain High Enough」。♪エインノー・マウンテーン・ハーイナーフ♪というアップミドルなテンポのよい曲ですが、無数のカバーバージョンが存在するのでCMなんかで聴いたことあると思いますよ。
 そのカバーを全部すべて聴いているわけではないですが、おそらくオリジナルが一番キュンと来ます。断言します(笑)
 この二人のための曲はほとんどがアシュフォード&シンプソンという60年代後期から70年代中期にかけての天才メロディメイカー夫婦が担当しています。曲そのものは「黒っぽく」無いんですけど全然、そこがまたイイんですねえ。
 
 他にも「Ain't Nothing Like The Real Thing」「The Onion Song」(椎名林檎もカヴァーしてますね)なども一般的か。
 他の曲もそっちの世界では有名かつ素晴らしい出来なんですが気になった方は上記3曲あたりをYou Tubeなんかで聴いてみてもらえたら、と思います。自分ではデュエットやったことないですけど(笑)
 普通はここまで息の合うデュエットは無いです。その「自然さ」と声の機微を聴いてもらえたら、と思います。
 タミーさん、一見サラッとしているところがいいんですよね。押し付けがましくない。
 あまりにも定番なので、外資系のショップのサイトなどで検索してもらえればたくさん出てくると思いますが、あんまり曲もたくさん入っているヤツでなくていいので購入してみてください〜。
 いやーもう「昔のだし〜、知らないし〜」で済ませてしまうにはもったいない!そんな宝石のような曲たちがたくさん詰まっています。
 マーヴィン&タミーともに現在は鬼籍に入っておりますのでなかなか若い人の目に触れることは少ないとは思いますが、40年近く前の音楽にも関わらず、全く古臭くなっていません、ぜひ一度手にとって聴いてみてほしいものです。

 ちなみにタミー・テレルのソロアルバムってのも存在するんですが、オリジナルの形で入手するのは現在相当困難なので、編集盤をどうぞ。
 マーヴィンとのデュエットと彼女のソロから編集されているものもあります。共に内容はキュンキュンです(笑)

-2010.10月

 

 最近、仮面ライダー『クウガ』以降のいわゆる「平成ライダー」4番目に放映された「仮面ライダー555(ファイズ)」を全話レンタルしてきて見終えた。もちろん全50話をいっぺんに見るのは不可能なので、少〜しずつ寝る前とかに。
 基本昭和の「ストロンガー」あたりの世代なので、放映当時はそれ以前の平成ライダーなどはまったく見ていなかったのだが、なんとなく見始めたこの作品には非常にハマって、できるかぎり日曜の朝8時には用事は入れないようにしていた記憶がある。だが、最初のほうのエピソードは見ていなかったのと、なんだかんだで日曜の朝からでかけねばならない用事があり、見損ねた回もあった。それが何故か今になって、「ツタヤ」の100円セールなんかを狙いVOL.1〜5までとかVOL.9〜最終話まで、という感じでまとめて借りて見ました。

 放映当時2003年と今から7年前。それでも僕は三十路頃と、仮面ライダーを見てるような年齢ではないのですが、なんというか、「昭和ライダー」の石ノ森章太郎原作から「特撮ヒーロー」だけを取り出した単純明快勧善懲悪子供向けのお話とは違い、「バッタのお化け・怪奇もの」としてスタートした初期の仮面ライダーの姿とは遠く離れた姿にも関わらず石ノ森原作の「悲哀」みたいなものがにじみ出ている気がして(石ノ森章太郎は没後につき製作にも関わっていない。)ついつい見てしまっていました。
 ストーリーの概要としては、『なんらかのショックを伴う事故などで命を失った人間が、その死後「怪人」に変身できる能力を持った人間の進化系「オルフェノク」として覚醒し、その力に溺れた者が人間を襲うという事件が起こり始めていた・・・唯一オルフェノクを駆逐することができる「ファイズ」「カイザ」「デルタ」に変身するための3本ベルトをめぐる物語』
 ある条件を満たしていれば基本的に誰が使用してもライダーになれてしまうのだが、(改造人間という設定の「昭和ライダー」とは違った趣)その条件というのが後に判明して、なんと「オルフェノクもしくは体にオルフェノクの記号を埋め込まれた者のみ変身可能」という設定。最終的に当時19歳の半田健人演じる主人公の乾巧が実は人間の敵であるオルフェノクであった。という風雲急を告げる展開でクライマックスに突入する。ラスト3話くらいで今までずっと一緒に戦って来た村上幸平(この人も好演していて好きでした。)演ずる「カイザ」も、今まで「人間であり続けたい」と願う副主人公のオルフェノクに首の骨を折られた挙句シュワ〜っと灰になっちゃうし、「昭和ライダー」に慣れていた僕としては「マジかよ〜、、、。」とちょっとした衝撃でした。まあまあ結局は「人間の心を失わないオルフェノク」と「人間」の共存の道を探す主人公たちの人間ドラマという風に言えるのですが、いやあ、今見ても面白かったです。こういったヒーローものではエピソードごとに脚本を担当する人間が違う場合が多いのですが、この「ファイズ」に関しては、全50話分通して同じ脚本家が担当していたらしく、それもあって根底に流れる「テーマ」みたいなものが一貫していたのかもしれません。子供には若干難しい内容と思いますが、変身に一般に浸透し始めた携帯電話を使用したりという効果もあって、グッズの売れ行きは歴代トップらしいです。

 えーと、「全然音楽と関係ないじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、そうすね、ここからです。ここから。
 主人公を演ずる半田健人なのですが、仮面ライダーが最終話を迎え、その甘いマスクも手伝って俳優として大きく羽ばたくのか、と思いきやチョイ役で時々見ることはあっても、一般に認知される程ではなく「このまま消えてゆくのかな〜。」なんて、心配していたのですが、意外なところからお茶の間に浸透していきました。それは「歌謡曲の超マニア」として。
 皆さんも、仮面ライダーとしてではなく、バラエティで歌謡曲について情熱的にコメントする彼なら多分見たことがあると思います。その路線も高じてついには歌謡曲歌いの渚ようこさんとデュエット曲をリリースする始末。同じく仮面ライダー出身の水嶋ヒロやオダギリジョーほど、俳優としては華々しい活躍はしていませんが、独自の路線を確立していちファンとしては嬉しい限り。今回、彼についていろいろと検索してみたりしたのだが、そのマニアックぶりを示す動画がYou Tubeにも上がっているので興味のある方は探してみ てください。
 
「ま、今回はこういう感じだし、歌謡曲からチョイスするか。歌謡曲の黄金期といえばやっぱ70年代だろ。」といろいろとレコ棚を探ってみたのですが、「やばい、、さほどタマが無い、、。」ということに気がつきまして、、。キャンディーズのベスト、欧陽菲菲のベラミ盤、奥村チヨのライブ、布施明のアルバムなどは見つかったんですが、なんでだかこれにしてみました。

第三十六回

  
 秋庭豊とアローナイツ / 港町・涙町・別れ町

 74年のアルバムでアトランティックからのリリースなところが洋楽好きにはたまらない。ジャケットを見る限り「6人編成のコーラス・グループ」かとおもいきや、なんとバンド。秋庭豊(ギター)を中心とする北海道の炭鉱で働いていた連中で組まれたバンドなのでした。ボーカルは木下ゆたか。たしか何年か前に100円で売っていたのを買ってきてそのまま放置してあったような気がします。普段はこのエッセイで取り上げるものは「資料を特に探らなくても書ける」ような音源が多いのですが、今回はこれが初視聴、、。ジャケットでは白のスーツに身を包んだ6人が断崖に立ってポーズを決める、といったものですが、明らかにヤ○ザ風のこの人たちのバックだとどう見ても日本の海にしか見えないのはなぜでしょう?「ザッパーン!」という波の音すら聞こえて来そうです。オホーツク海でしょうか?それとも日本海でしょうか?
 ヒット曲の札幌・大阪・長崎それぞれの中の島を取り上げた「中の島ブルース」が1曲目を飾っていますが、「完全に演歌じゃねえか!」というくらいのコード進行と歌唱。「津軽海峡冬景色」、「長崎は今日も雨だった」も収録されていて、2回くらい通して聴いているといわゆる演歌というにはハードコアな側面があることが判ってきました。基本「内山田洋とクール・ファイブ」スタイルのムード歌謡グループに分類される感じだと思うのですが、演奏も特に特筆するほどのものもなくストイックに歌に寄り添っています。となると歌の良し悪しにかかってくるのですが、この木下あきらさんは基本の声質自体がさほど特徴的なところがなく、普段鬼畜音源を聴きなれている僕なんかにはスーッと通り過ぎて行ってしまって、初回ヘッドフォンで聴いていたら、、、寝ました(笑)。「あ〜、こりゃ果たして企画失敗だ。」と思っていたのですが、2度目にヘッドフォンを使わずにスピーカーを通して聴いてみたら、結構発見があって、寝ずに通して聴けました(笑)それは、ビブラート、声の揺らし方なんですけど、通常ビブラートというと、歌の伸びる部分、例えば「ふゆげ〜ぇしき〜(冬景色)」の「き〜」の部分を出来る限り伸ばすために声を揺らすテクニックで、揺れのサイクルとしては「きぃぃいぃぃ」という3連のリズムになると思うんです。その間隔が大きくなるか小さくなるかの違いだけで。ですが、この木下あきらさんはビブラートのリズムがバックのリズムとバッチリ合っている。バックのリズムが「ダ・ダ・ダ・ダ、ダ・ダ・ダ・ダ!」だとしたらボーカルは「きぃいぃいぃいぃ、いぃいぃいぃいぃ〜」とわざとそこにアタックを付けているんですね。なんというスクエアなビブラートなんでしょう!それに言葉のアタマごとに裏声を交えるテクニックで、実にリズム感のある歌唱になっています。平ウタまではお顔に似合わず普通におとなしく歌うんですが、サビ直前あたりから急激にこの歌唱法に切り替わり俄然ハードな印象になるんですね。少し60年代のハードな歌唱法の時期のマーヴィン・ゲイと重なりました。いやあ、それにしても1回目聴いたときはすでにサビ前までに眠ってしまっていたということなんでしょうか。この落差!比較対照のクール・ファイブ自体も僕はあまり詳しくなく、フール・ファイブもこういった歌唱法なのか、、、?この件について一度小池パピー先生にご教授願わないといけないのですが、この僕にとって違和感のある歌い方に気がついたことによって俄然このレコードは面白いものになりました。収録曲のなかでは「献身」「襟裳岬」「港町・涙町・別れ町」あたりが好きです。「港町〜」は裕次郎の曲みたいですね。他の曲もカヴァーなんでしょうか?ちなみに、このアルバムを画像検索してみたんですけど、出てきませんでした。どういうアレなんでしょうね?ベスト盤なんかは豊富にあるでしょうし、You Tubeなんかでも音は聴けると思うので、興味 のある方はそちらからどうぞ。

 では〜。

-2010.8月


 実家にいる猫の中でも最長寿の猫の「ハナ」が今月の10日に死んだ。19歳、老衰。

 ハナは僕が高校生のころに、道端に4,5匹捨て捨てられていたうちの1匹。他の子は元々鼻のあたりに奇形があり、呼吸が完全でないため育たなかった。一番元気がなく「こいつはダメかもなあ。」と言われていた彼女が結局生き残った。おそらく生まれてすぐに捨てられた為、まだ目も開かずにミーミーと泣くだけだったハナちゃん。母が仕事に一緒に連れて行って、ミルクをやりなんとか育った。

 僕がまだ実家にいるころは、彼女のお気に入りの場所は僕のCDコンポのスピーカーのまん前で、僕がいくら音楽を鳴らしても逃げない。母にもよく「ハナはよくそんなうるさいの聴いて平気だねえ。」なんて言われていたなあ。、、、と、ここで聴いていたのがジャズとか郷愁を誘う音楽ならサマにもなるのだが、当時僕が聴いていたのは「ハードロック・へヴィメタル」と相当極悪系の音楽。当然、ハナも「メタル猫」としての猫生をスタートせざるを得ないのであった。

第三十五回

 
 Metallica / Ride The Lightning

 そんな彼女が当時一番よく聴いて(聴かされて?)いたのがこのメタリカのアルバム。今となってはメタリカの初期のアルバムということになってしまうのだが、そのころはまだ新鮮なころであった。
 
 いわゆる「スラッシュ・メタル」というジャンルにカテゴライズされていた彼らだが、「スラッシュ・メタルとはなんぞや?」という方に〜ヘヴィメタルとは、金属的なギターの音色による「リフ」というフレーズの繰り返しによって構成される演奏の上に、悪魔的・暴力的なイメージの歌を乗せることによって生まれるへヴィな感触を持つ曲を言い、スラッシュ・メタルとは「切り裂く」の意味の通り、それをさらに「速く、ソリッドに」特化させた演奏形態を指す。極限まで歪ませたギターを前面に押し出し、ドラムはバスドラムを2個使っての「ツーバス」奏法でさらに速さを表現、ボーカルはダミ声だったり、むやみに声が高かったり、えらい低い(というか押し殺した)声だったりと、どちらかというともはやメロディを歌うというよりは「がなる」に近い歌唱法。
 と否定的になりがちな解説になってしまうが、スラッシュにはスラッシュの美学があり、今回聴きなおしてみてもそれなりに「いいなあ」と思う部分はあった。だがしかしベースに関しては、他の楽器がかなり前面に張り付いていて、しかもその楽曲の成り立ち上、ギターとユニゾン(同じラインをなぞる)することが圧倒的に多いため、単体で何をしているか、というのを判別するのは非常に難しい状態のものが多い。メタリカのこのアルバムでも時折「ガラガラ」と聞こえてくるくらいでいざコピーするとなると苦労したおぼえがある。

 そう、大学入りたてのころはこのメタリカをよくコピー、演奏していたのであった。今では、メタリカのアルバムのうちでも「最高傑作」と称される作品はこれ以外のものになる場合が多いと思うが、なんでこれが一番聴く頻度が多かったかといえば、よくコピーしていた「Creeping Death」という曲が入っているからだった!
 アルバム7曲目にあたるこの曲。「スラッシュ・メタル」を1曲で全て表現したような曲で、「速い・リフかっこいい・ギターソロかっこいい」と、当時のその手のコピーバンドは必ずレパートリーに入れていたはず。メタルの定石となった「アコースティックギター始まり」で幕を開けるこのアルバム、じわじわとテンションを上げてきて、ラスト前のこの曲でドカン!最後はまったり締めるといった流れになっている。まあ、ガキだった当時はそういった流れなどを楽しむといった情緒はまったくなく、いきなりこの「Creeping Death」でワーッというのがパターンだったかも。中間部の「Die! Die!」とガナる掛け声パートもかっこよかったなあ。『デトロイト・メタル・シティ』みたいだねえ。

 こうやって、だいぶうっすらとしてきた当時の記憶を思い出しながら、ポワワンと浮かんでくる当時の僕の部屋の風景。音楽の内容に反してちょっとしんみりもしてしまいます。ちなみにハナちゃんはこういった音楽教育が効いたのか、「猫扱い」したり礼儀を欠いた接し方をする者には「シャー!」と唸る孤高・高潔なレディに成長しました。特に大きい病気をするわけでもなく長生きしたね。天国では先に旅立った他の子たちとも仲良く、楽しく過ごしてね!

-2010.6月


第三十四回

 
 Janis Joplin / In Concert

 前回からエレキベースが入った音源も解禁にしてしまったので、ついにMotownの話も出てしまいました。
 最近「Motown complete Singles」なる5〜6枚組のボックスセットが11シリーズ(全部集めると軽〜く10万円を超えるという)も出ていて、日々、HMVのショッピング・カートをポチりそうになる誘惑と戦いながら過ごしています。(後日結局、3セット18枚分を購入してしまいました、、、。)
 Motownの話になると、もう膨大な数のアルバムを持っていて、ホントそればっかりになってしまいますので、ここはひとつ昔話でも、、。おそらく数回はこの昔話シリーズになりそうな気がしますが、それを先にお断りしておきます。

 ハードロック、ヘヴィメタル一色だった高校時代から大学入学を経、ご多分に漏れず「軽音楽サークル」に入部した僕。しばらくは同期のメタル仲間とともにそういった音楽を演奏していました。
 どういったきっかけでそうなったのかは今となっては分からないのですが、ある時実家に電話がありまして、「隆行〜、電話よ〜!」という母の声。受話器の先にはあまり聞き慣れない声。
 「ベースやってくれない?」
 名前を訊いてみると2コ上の女性の先輩。もちろんペーペーの僕にはお断りできる余地などは全くなく、「分かりました。僕でいいんですか?」ってな感じでやり始めたのが、この「ジャニス・ジョプリン」を中心とするソウルナンバーをカヴァーするバンドだった。

 電話をかけてきた女性ボーカルとギターは恋人同士、僕には今も縁のないアメリカン・バイクで、これまた二人乗りで長い髪をなびかせて登校してくる様はリアルヒッピーそのもので、バンドのスタイルもその二人がいることで既に決定付けられていたと思います。演奏の場所は、当時まだ活気のあった福生。僕もこの二人に引っ張られるように、ブラックジーンズからベルボトムへ、新しい世界の扉を開いていった。

 この頃はことレコードなどの状況についても、今ほど情報が溢れかえってなく、自分が求めているであろうものは自分で店舗に出向き、見定めて手に入れる、という方法しかなかったように思います。もちろんお金も持っているはずもないので、厳選した一枚をネチネチと繰り返し聴くということが多かったように思います。バンドで演奏する素材としても、何度となく聴いて、それこそボロボロになるまで聴き込んだ一枚が、この「ジャニス・ジョプリン・イン・コンサート」です。

 もしかしたらもはやご存知ない方もいらっしゃるかとも思いますが、ジャニスは、ギタリストの「ジミ・ヘンドリックス」と並び60年代中盤から70年代初めまでのロック界を一気に駆け抜け、そしてまた彼と同じく、天才と呼ばれたまま若くして伝説となってしまった白人の女性ボーカリストです。ロックファンにとっては有名な曲はたくさんあるのですが、CMで使われた「サマータイム」の絶唱などはもしかしたら聴きお覚えがあるかもしれませんね。(サマ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!タイムタイムタイム〜という出だしの曲です)

 活動期間も短いので、他のスタジオ盤のアルバムの数なども少ないのですが、どのアルバムを取っても今聴き返してみてもスゴイ密度!僕はスタジオ盤だったら、「パール」というジャニス夭逝後に発売されたアルバムをおすすめしますね。ほんとに一曲もハズレ曲がない!これは凄いことです!

 今回取り上げた「イン・コンサート」はライブ盤なのですが、レコードだと2枚組で、前半と後半でジャニス以外のバンドメンバーが違います。前半はジャニスの初めてのバンド「Big Brother & The Holding Company」、後半はジャニス〈最後の〉バンド「Full Tilt Boogie」。Big Brotherはサイケ路線のツインギター編成で演奏技術はもう一歩だけど、とにかく勢いがある。片やFull Tiltは技術やニュアンスは確かで、 音のダイナミクスが素晴らしい、「爆発力」という面ではBig Brotherよりも控えめ、ピアノとオルガンがいる。もちろんどちらも好きなのだが、僕は後半の方をとにかくたくさん聴いたかな?僕が参加していたバンドでは「バイバイ・ベイビー」「心のカケラ」「サマータイム」「ハーフムーン」「コズミック・ブルース」「ムーブ・オーヴァー」「トライ」「愛は生きているうちに」「ボール・アンド・チェイン」などが、レパートリーに入っていましたよ。

 他のバンドやミュージシャンはそんなことが無いのですが、このジャニス・ジョプリンだけは、「のめりこんで聴きたい時期」と「今は絶対に聴きたくない時期」というのがあります。
 聴き込んだ時期の思い出に深く食い込んでいるからか、もしくはジャニスが歌に大してあまりにも全身全霊をもって取り組んでいるからかわかりませんが、きちんと向かい合うと相当疲れる音楽です。
 ジャニスを通ったミュージシャンたちとその話をすると結構似たような意見で面白いです。立川さんも聴いていたようなので一家言あるはずです。彼なんかはどんなふうに捉えているのでしょうね?

 ジャニスは歌を歌う「その瞬間」を大事にして「今」を生きた人間。その「瞬間」を閉じ込めたライブアルバムはやはり彼女の一番オイシイ部分だと思います。今では彼女も伝説的にデフォルメされてしまっている所も多々ありますが、このアルバムを聴けば、単に「本当のソウルシンガーの一人だったんだな。」と思っていただけると思います。精神状態の良いときに一度向かいあってみてはいかがでしょうか?

-2010.4月

 

第三十三回

 
 Stevie Wonder / For Once In My Life

 「好きなベース弾きは誰?」という質問には、こう答えることにしている。
 「ジェームス・ジェマーソンです。」

 英語の発音では「ジェイムズ・ジャマスン」のようになるらしいが、日本表記ではこれが通り。現代ポップスの礎・デトロイトの「モータウン」レーベルのハウス・ベーシストだ。
 「モータウン」というと、マービン・ゲイやダイアナ・ロス&シュープリームス、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、テンプテーションズ、マーサ・リーブス&ザ・ヴァンデラス、幼き日のマイケル・ジャクソンを含むジャクソン5などを排出したレーベルである。
 ソウル・ミュージックと呼ばれるジャンルの中でも泥臭くなく、ジャズ的センスと明るくキャッチーなメロディで、無数の名曲を残している。
 ピークとしては60年代から70年代初頭ということになり、その膨大な録音のほとんどでベースを弾いているのが「ジェームス・ジェマーソン」なのです。

 演奏スタイルは元々はウッドベースからエレキベースへのスイッチ派(この時代には多い)で、フェンダーのプレシジョン・ベースに温かい音の出るフラットワウンド弦を張って、人差し指1本(普通は人差し指・中指の2本)で弾く独自のスタイル。
 僕も真似したが、力が入らなくてなんというか物理的にできなかった、、、。
 そんな彼の活動の中でもベーシストとして、一際きらめきを帯びていた(と僕は思う)時代が66年くらいから70年ころ。
 今回紹介するのは68年の作品で若き日のスティービー・ワンダーのアルバム「For Once In My Life」です。

 「盲目のソウル・シンガー」として、幼年期からクロマティック・ハーモニカとグイグイと引っ張るリズムの効いたボーカルを武器にモータウンの専属として活動していた彼ですが、この頃は10代から20代へと切り替わるころだったはずです。
 当時の映像などでも、ハモニカ片手に右に左に体を揺らしながら歌う独特のスタイルでグルーヴメーカーとして非常にカッコいい姿が確認できます。
 70年代以降はマルチプレイヤーとして、ドラムからベースから何から何までを自分ですべて演奏し・プロデュースする権利をモータウンから得て、現在の姿へと変化していくのですが、このころは本当に「ボーカリスト」としてノっている時期で、ジェマーソンを含む「ファンク・ブラザーズ」(バックのミュージシャンたち)の援護射撃もあり、あり得ないほど凝縮された内容になっています。

 歌の機微だけを取れば、もう少し分別のついた70年代のセルフ・プロデュース作品のほうが心にしみたり、また、人気も高いのですが、なんともここでのテンションの高さ!カーステなんぞで大音量にして聴くと、仕事終りでビールをのどに流し込むおっさんのように、思わずひとり「くぅ〜!」と唸ってしまうほど。ベーシストとしても60年代後期が一番オイシイなあ。

 1曲目の「For Once In My Life」からして最大テンションです。タイトル曲に1曲目、そしてこのアルバム中最大の名曲。
 この曲はジャズのスタンダードとしてスローで演奏されることが多く、ジャズの曲と思っている人も多いと思いますが、一番有名で売れたバージョンはこのスティービー版ということです。ロナルド・ミラー作詞、オーランド・マーデン作曲。
 僕はずっと、これがオリジナルで、スローのものはジャズ的解釈でカヴァーされたものが定着してスタンダードになったものと思っていましたが、いろいろと事情があったようです。
 こちらのブログで面白い記事を見つけたので貼りつけておきます。
  http://plaza.rakuten.co.jp/miyajuryou/diary/200610070000/

 要約すると、モータウンがある外部の女性シンガーにこの曲を提供。売れなかったが、自分のところのテンプテーションズとスティービーに吹き込みをさせる。スティービーの版は発売が1年遅れ、その間にジャズのトニー・ベネットがカヴァー。売れ行きはスティービーがトップ。というところみたい。へえ〜。

 あ、話がそれたけども、この曲のイントロのギター「チャッチャラ・チャッチャーラ」からドラムの「タカトン!」を合図に始まるボーカルとベースの絶妙すぎる絡み、、、僕がベースを弾いている理由がここにあるんだよなあ。
早いテンポ・勇ましいタッチの曲の上にかぶってくるストリングスのアレンジも素晴らしい。
 曲通して、これだけ派手に楽器群が出張っているのにボーカルが全く埋れていないというのは、アレンジなのか、演奏者達の腕前ということなのか、とにかくものすごいバランスの2分39秒なのである。

 2曲目はスティービーのこの頃のライブでは重要な位置だったと思われるクラヴィネットのサウンドが効いた「Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day」に続く。この曲はジャクソン5もカヴァーしていますね。
 3曲目は同様の曲調の「You Met Your Match」と続き、じんわり哀愁から始まる「IDon't Know Why」でA面締め。
 作曲クレジットを見ていて思ったのですが、スティービーの名前が連名で入っている曲がA面で5曲、B面で3曲。基本アーチストとは別に作曲チームがいるモータウンとしては珍しいことで、すでにこの時点で自分で舵を取る方向へとシフトし始めているということなんでしょうね。
 B面はボビー・ヘブのカヴァー「Sunny」から。オリジナルは熱いソウルチューンですが、こちらはじんわりと盛り上がってくる手法ですね。
 「Ain't No Lovin'」という曲がB面3曲目に入っているのですが、この曲が一番70年のスティービーに近いテイストで、来るべき黄金期を予感させます。
 モータウンのアルバム作りは、「シングルカットした曲を軸に他はおまけ」的作りで、アルバム通しての起承転結もへったくれもないものも多いのですが、このアルバムは起伏があるし、「捨て曲」がないので両面通して聴き通せます。こういったところも彼がこだわったところなのか?などと考えると楽しいのです。
 ラストは「The House On The Hill」(←この曲のベースのピックアップがメチャクチャカッコ良い!)。再度アップテンポに戻ってサッパリとした後味で幕を閉じます。

 アルバムを通して聴くのは久しぶりだけど、ここ3日くらいカーステでローテーションしてます。
 ああ、そうだ。モータウンって、ソウルという括りにしては明るくキャッチーな曲が多く、後世への影響はどちらかといえばポップス系のアーチストへの方が多いような気がするけども、僕としては、スター達の奏でるポップなメロディの後ろで、絶大な才能を持ちながらにして、栄光を掴むことのできなかったバックメンの怨念というかブルースというか、そういったものを感じて頂きたい。そこらへんが僕の心をつかんで離さない所なんだと思うので、、、。

 学生時代、モータウンのレコードを聴きまくり、「カッコイイー!俺こういう風に弾きたい!!」とドキドキワクワクがこらえ切れず、6畳間を転げまわった記憶が蘇る。
 幸い現在はこれのコピーに終始せず、自分なりの演奏をできているのが幸せとは思うが、この時の情熱そのものはいつでもこのレコードを聴くと思い出せる。
 69年の「My Cherie Amour 」と併せておすすめしたいアルバムです。

-2010.2月

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